長野日報 朝刊(毎月第1日曜日)での連載 諏訪中央病院リレーコラム『おらほの病院』、
12回目となるコラムが8月6日(日)の朝刊に掲載されました。
ご覧になれなかった方は、ぜひ以下よりご一読ください!
(出典:長野日報8月6日(日)掲載分(転載の許可を得ています))
長野日報掲載 諏訪中央病院リレーコラム
おらほの病院 ~あたたかな医療をめざして~ 第12回
「私が大学教授を辞めた本当の理由」
院長補佐 山中 克郎
3年前、名古屋近郊の大学病院を辞めて、諏訪中央病院で働き始めました。55歳になった時、残りの医師人生をかけ地域医療の充実に取り組みたいと思ったのです。急速な高齢化と医師偏在のため、地域での医療や医学教育は日本の重要な課題となっています。「あたたかな急性期病院」として、病院での急性期治療だけでなく、自宅を訪問し慢性期治療まで継続して行う点が諏訪中央病院の特徴です。患者さんや家族に寄り添い、治療手段がなくなったときには、大切な家族や友人に囲まれながら幸せに人生の終焉を迎えるお手伝いをします。
最新の医療施設で最先端の治療を受けることが、必ずしも患者さんにとっては幸せではありません。多くの疾患を抱える高齢者の終末医療においては、死をどこでどのように迎えたいかという希望に沿うように、家族や医療者が協力しなければなりません。安全を最優先する病院や施設での管理は、患者さんのプライバシーや自由を侵害することもあるのです。
諏訪中央病院の若手医師は生き生きと楽しそうに働いています。ベッドサイドで患者さんと語り合い、患者さんの幸せを第一に考えた治療をしています。病院の中庭にはボランティアの皆さんが手入れを続ける素敵なハーブガーデンがあり、可憐な花々と白樺の木立を吹く涼風が疲れた心と体を癒してくれます。詩人、草野心平の言葉を借りれば、「強いヒュウマニティがあふれ、フルーツのような、ハアプのような音楽を奏でて愛しい」病院です。
病院職員が中心になって活動する「畑クラブ」に入っています。毎日、畑の管理をしない私たちの畑では、植えた野菜がどこにあるのかわからないくらいに雑草が生い茂っています。農家の皆さんは本当に大変な作業をされているのだなと実感します。畑は八ヶ岳を眺める尖石遺跡の近くにあります。縄文文化の中心地で国宝「縄文のビーナス」が発掘された場所です。今から5千年前にも、日本人の祖先がこの場所で生活していたのかと考えるとロマンがかきたてられます。赤大根の葉には虫に食べられた無数の穴があり、ジャガイモはモグラにかじられています。私たちが作る野菜はよほど美味しいようです。
さあ、今週も新しい患者さんとの楽しい出会いが始まります。
次回は平成29年9月3日掲載予定です。