諏訪中央病院では過去にも災害に対しての支援を行ってきました。国外ではボスニアの戦争後、バングラデッヂュの大洪水、チェルノブイリなど。国内なら阪神大震災や新潟中越大地震などにも行きました。「困った人がいるなら助けに行こう」そんな文化が病院にはあるんです。
地域医療って本当はそういうもんだと思うんですよ。自分達が持っている「地域医療」を住民の方々に当てはめるのではなく、その土地その土地に必要とされる事がある。それに応えていく事が「地域医療」なんです。そういう点では長野県で医療をやるのも被災地で医療をやるのも何も違いはない。同じなんです。
被災地支援に関しては難しい点もあるんです。向こうから依頼を待ってるだけでは物事が動きにくい。こちらから現地のニーズをつかんで自ら動かなければいけない。それに応えようと動いていく。それが地域医療だし、その過程を通じて医師も成長する。
現在の石巻支援活動はいずれも卒後3年~5年の若手医師が各1カ月以上行っています。その若手であるという事が重要。その人たちが帰ってきて長野で活躍し、いずれは各地に散らばってそれぞれの土地で地域医療を行っていくんです。田舎でも、都会でもそこで必要とされる地域医療がある。この経験がそこで必ず生きる。
病院でやっているだけでが医療ではないんですよ。病院を出て町に出る、そこで住民と人たちの声を聞きながら在宅をやったり地域保健をやったり。今の時期の被災地だと急性期医療ではないし、慢性期の病院医療活動が再重要というわけでもない。例えば石巻であれば津波によってコミュニティーが破壊されてしまったでしょう?そのコミュニティーをどう再構築していくか、それが重要なんだと思います。その支援をすること、それもまた地域医療です。
被災して家族を失った人は「今」どうしているのだろうってよく思うんですよ。私は外科医ですが、「余命あと数カ月です」という宣告をした時、患者さんはどうするか。実は目の前の当たり前の生活を一生懸命にやるという事が多い。今被災地で新たに生活を始めていらっしゃる人たちは、訪れてしまった重大な現実に対し、毎日の生活をするということでなんとか自分を支えておられるのかなあ、そんな風にも考えたりします。
こういった災害は世界中で起こっている。この経験は言葉や形にならないような学びになって本人の中に残っていると思う、それを活かして今後また活躍してほしいと思っています。