統括院長に就任し、この1年、医療のみならず、介護や福祉、そして教育とさまざまな分野、さまざまな立場の人たちと交流させていただきました。新しい発見や出会いに感謝すると共に、地域の皆さんがそれぞれの立場で、時代や地域の課題と向き合って生きていることが良く分かった1年でもありました。世界ではますます分断が進み、自分の国や所属しているコミュニティーさえ良ければよいという風潮が強くなっていますが、この地域では次の1年も地域の皆さんと信頼し支え合って、弱い立場の人に優しい社会を作っていきたいと考えています。
昨年来、85歳以上の高齢者の増加や人口減少がさらに進む2040年とその先を見据えての「新たな地域医療構想」の議論が国主導でなされ、今年度はガイドラインが策定される予定です。「新たな地域医療構想」は、全ての地域・世代の患者さんが、適切に医療・介護を受けながら生活し、必要に応じて入院し、またもとの日常生活に戻ることができ、同時に医療従事者も持続可能な働き方を確保できる医療提供体制を構築するというものです。
この中では病院の入院機能の議論だけでなく、外来診療や在宅医療、医療と介護の連携をどうしていくのかも議論の対象となっています。諏訪中央病院組合としての多様な活動がますます期待されることになりますので引き続きご支援をよろしくお願いします。
統括院長 今井 拓
諏訪中央病院組合は、茅野市、原村、諏訪市の2市・1村で構成される地方公共団体の組合(一部事務組合)です。
諏訪中央病院を中心として、介護老人保健施設「やすらぎの丘」、介護老人福祉施設「ふれあいの里」、看護専門学校をグループとして運営し、地域住民へのあたたかい医療の提供、高齢者への介護・福祉サービス、看護師の人材育成を行なっています。
2023年4月から茅野市から経営移管を受け、国保診療所群(リバーサイドクリニック、北山診療所、泉野診療所)を運営して来ました。施設の老朽化や利用者減少もあり残念ながら泉野診療所は2025年3月末日で閉院となりましたが、在宅診療をリバーサイドクリニックへ1本化することで、「在宅緩和ケア充実診療所」にも認定され、より重症な患者さんへの対応も可能になっています。
諏訪中央病院組合は、医療、介護・福祉から看護教育までを担うために、この地域の先人たちが作ってきた大切な「社会的共通資本」です。これを時代の状況に合わせ、発展的に守っていくことが私たちの使命であると考えています。
この少子高齢化・人口減少社会の中で、医療や介護のニーズは今後10年程度は横ばいから微増と推測されていますが、これを担う働き手が減少していく局面を迎えています。人口減少の問題は、医療の分野だけでなく、社会全体の課題であることは皆さんも感じていることでしょう。持続可能な地域社会を維持するためには、魅力のある地域、魅力のある医療、魅力のある教育が必要です。地域の魅力向上にも引き続き貢献していきたいと思います。
持続可能な医療を実現するために、諏訪中央病院組合は、DXを用いた働き方改革、グループの強みを活かした人材教育・人事交流を行なっていきます。また介護施設でも、施設の老朽化に加え、魅力ある施設作りが必要になって来ています。2025年度は「次世代型の福祉環境整備のための基本構想」と銘打って、色々な世代や立場の人が混じり合うことでそれぞれが役割を持って支え合い、「地域共生社会」を体現できるような介護施設のあり方を構想していく予定です。地域の皆さんも巻き込んだ議論をしていきたいと考えていますので是非考えをお寄せください。
組合立の良さは、市町村といった自治体の垣根を超えて、生活圏にあった医療体制を作ることができるところにあると思います。新たな地域医療構想の中では、人口減少の程度や地域ごとに直面する問題が異なるため、それぞれの地域の歴史や特性にあった医療体制を目指すことになっており、当組合も医療・介護・教育の「社会的共通資本」として八ヶ岳西南麓に広がる生活圏をどのように守っていくのか検討し続けていきます。
「ほろ酔い勉強会」や「ほろ酔い座談会」、「次世代型の福祉環境整備のための基本構想」など様々な活動を通じ、地域の皆さんと一緒に考え、共に当地に合った医療体制を作っていきたいと考えています。