2017.07.18
長野日報 朝刊(毎月第1日曜日)での連載 諏訪中央病院リレーコラム『おらほの病院』、
11回目となるコラムが7月2日(日)の朝刊に掲載されました。
吉澤院長によるコラムです。
ご覧になれなかった方は、ぜひ以下よりご一読ください!
(出典:長野日報7月2日(日)掲載分(転載の許可を得ています))
諏訪中央病院リレーコラム
おらほの病院 ~あたたかな医療をめざして~ 第11回
「地域から信頼される病院を目指して」
院長 吉澤 徹
諏訪中央病院に現在の総合診療科の前身である内科総合診療グループが出来たのは今から15年前の2002年です。当時、大学病院を中心に専門科の細分化が進み、臓器別の専門医が増えていました。諏訪中央病院でも徐々に臓器別専門医が主流になりつつありました。地方でも高度専門医療が受けられるようになった一方で、高齢者のように複数の疾患や複雑な問題を抱えた患者さんの診療や初期診療(プライマリ・ケア)の担い手がなかなかいないなどの問題が当院でも生じてきました。また専門医が初期診療を担うことは専門性を生かせず、非効率でもあります。実際、都会に医師が集中し地方の病院に就職しない理由の一つに、地方へ赴任すると経験のない分野を担う不安が大きいことがあるとも言われます。
そんな折、農村医療そして高度医療と健康教育にも力を入れていた佐久総合病院が総合診療部を立ち上げ活躍しているという情報が耳に入ってきました。私たちは佐久に何度も足を運び、その若きリーダーであった川尻宏昭先生に教えを請いました。川尻先生からは、地域の必要性を知ることと患者さんと真に向き合うことすなわち「総合診療医とは患者さんひとりひとりの専門医」であることを学びました。
そして平成14年春に諏訪中央病院に内科医5名による総合診療内科グループが誕生しました。私たちは、その理念を「繋(つな)げる医療」と掲げました。
「繋げる医療」とは具体的に次の8項目です。
① 総合内科医と専門医を繋げる。内科と他診療科を繋げる。
② 急性期治療と慢性期・リハビリを繋げる。
③ 病院と在宅を繋げる。
④ 病院と施設(老人保健施設、老人福祉施設)を繋げる。
⑤ 各職種間(医師とコ・メディカル、事務職員など多職種)を繋げる。
⑥ 人間ドック・健診後の継続的治療、さらに翌年の受診へ繋げる。
⑦ 病院と診療所(病診連携)を繋げる。
⑧ 次世代のプライマリ・ケア医を養成し繋げる。
命を大切に思い、全人的に向き合う姿勢は専門医も総合診療医も同じです。専門医療と総合診療は車の両輪です。先進的かつ高度な専門医療がなければ救命できない病気や怪我はたくさんあります。一方で専門医がより専門性を高めて働けるように補完する間口の広い総合診療があれば専門医は活躍出来、患者さんの更なる安心につながります。諏訪中央病院が始めた内科総合診療グループは、今では成長して「総合診療科」として当院に必要不可欠な大黒柱になりました。そして総合診療科という当時は珍しかった診療科が、現在は日本中の多くの病院に誕生しています。
次回は平成29年8月6日掲載予定です。