新年度を迎えました。病院長に就任し、1年が経過したことになります。多くの方々と出会い、対話をさせて頂きました。人生の悲しみや面白み、地域社会の奥深さと多様さ、時代が抱える問題の広さと複雑さについて、今までにない経験を積み重ねさせていただいた1年であったと感じています。多くの課題に向き合い、考え、行動してきました。そのような1年を支えてくださった八ヶ岳西南麓地域住民の皆様、医療福祉施設関連の皆様、そして諏訪中央病院組合の皆様にまずは感謝を申し上げたいと思います。そして年度初頭にあたり、これからの諏訪中央病院の在り方について、皆さんにお伝えしたいと思います。
院長 佐藤 泰吾
地域住民の生活、すなわち人が生まれ、育ち、働き、衰え、亡くなっていく、その人生の過程を支えていくことが「社会的共通資本」としての教育と医療の役割です。諏訪中央病院が「やさしく、あたたかい、たしかな医療を目指す」ことを基本理念として、「あたたかな急性期病院」をスローガンに守っていくものは地域住民の生活と地域社会です。地域住民の生活と地域社会は時代の課題に直面します。その一つが少子高齢化・人口減少です。高齢者の生活を皆で支えながら、子供が生まれ、育つ環境を守って行く。そのことを時代の課題の中で成し遂げなければなりません。これは諏訪中央病院組合だけの課題ではありません。現代社会における共通の課題です。
高齢者人口がほぼピークをむかえる2040年に向けて、地域医療の在り方を再度検討する「新たな地域医療構想」が動き出しています。2025年には「新たな地域医療構想」のガイドラインが厚生労働省から提示され、圏域ごとに地域医療の在り方について検討する予定が計画されています。
このことから諏訪中央病院組合が受け止めなければならないもっとも大切なメッセージは、日本全国を見渡した時、地域ごとに人口減少の程度とスピードが異なり、直面する問題も異なるため、それぞれの地域ごとに国や県のサポートのもと、各地域の在り方を考えなければならないということです。当然歴史的、地理的事情も地域ごとに異なります。現在の諏訪二次医療圏の未来は自分たちで構想し、実行し作り上げていかなければならないのです。諏訪中央病院の在り方もこの地域全体の在り方と密接にかかわっています。
諏訪中央病院組合が地域住民の生活を守っていくために、「新たな地域医療構想」を通じて圏域の各行政機関、各医療機関、介護・福祉に携わる諸組織と議論を深め、未来を構想し実行していく必要があります。「やさしく、あたたかい、たしかな医療を目指す」という基本理念を掲げる諏訪中央病院が、ひとつひとつの困難を発展的に乗り越えていくための作業仮説として「八ヶ岳西南麓地域医療構想2025」を院内の議論を踏まえて、提示しました。
この作業仮説を通じて議論がなされ、新たな構想が生まれ、諏訪中央病院組合が未来へむけての実行を成し遂げることを目指しています。「八ヶ岳西南麓地域医療構想2025」は、これから2040年までの時間軸の中で、様々な地域データや現場の現状を踏まて、「諏訪広域圏域」「八ヶ岳西南麓圏域」「八ヶ岳西南麓在宅圏域①、②」(図)という空間軸を設定し、問題設定と解決策の構想、そしてその実行を目指すための作業仮説です。「諏訪広域圏域」では諏訪赤十字病院と協力し諏訪中央病院が担うべき広域で展開する医療に取り組まなければなりません。「八ヶ岳西南麓圏域」では高齢者救急・地域急性期機能を富士見高原病院と協力して守る必要があります。「八ヶ岳西南麓在宅圏域②」においては組合診療所群や訪問看護ステーションなどの取り組み通じて、地域の在宅支援診療所の先生方と協力をしながら在宅医療を展開しなければなりません。
「八ヶ岳西南麓地域医療構想2025」の詳細についてはこちら
図:「八ヶ岳西南麓地域医療構想2025」
奪い合い、押し付けあう形では未来は構想できなくなってきています。与え合い、引き受けあう形で未来を構想し実行したいと考えています。2025年度以降は諏訪二次医療圏において様々な協議が、いくつかの場で行われます。顔が見えない相手は敵になる。そのようにして人類が悲惨な歴史を繰り返してきたことを振り返らなければなりません。諏訪中央病院組合職員が力を合わせ、内向きに閉じることなく、地域にひらき、お互いの顔をみながら、「八ヶ岳西南麓地域医療構想」を作業仮説として、新しい未来を構想し、実行していきたいと考えております。
今年度も皆様のご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。